2013年11月29日金曜日

エネルギー変換:電子部品の特徴3 可変抵抗器(ボリューム)の構造

 
 抵抗器の仲間の可変抵抗器です。
 
 オーディオ機器の音量調節などで使われていて、電子部品の中ではメジャーな存在です。日常生活の中でも「ボリューム」で通用するほどです。では、その構造はどのようなものなのか、と言われたら…。と、いうことで、分解して構造を調べてみました。
 
 
分解に入る前にボリュームについて簡単に説明。
ボリュームはつまみの回転角によって抵抗値を増減させる装置です。
その抵抗値についてはボリューム本体に記載されている場合が多いです。
上の写真では「10KA」と記載があり、「10K」Ωの抵抗値があることがわかります。
 
では「A」はというと、ボリュームの特性を表しています。
 
ボリュームにはおおきくわけて3つの特性があります。どんなものかというと下のグラフに表します。
 
 
A特性:つまみを回すほど、急激に抵抗値が上がる
B特性:つまみを回すとリニアに抵抗値が上がる
C特性:つまみを回すと急激に抵抗値が上がって、その後穏やかな増加に転じる
 
このような特性があるには、ちゃんと理由があります。
まず、A特性の存在意義は人間の聴覚によります。人間の耳は小さな音には敏感に、大きな音には鈍感な性質があります。ちょうどC特性のような感度を持ちます。
よって、オーディオ機器でB特性のボリュームを用いると、小音量時に急激に音量が上がったように感じ、大音量時では音量の上昇に不足を感じます。
C特性のボリュームを用いた場合では、小音量時に急激に音量が上がり、その後音量の上昇を感じなくなります。
 
また、B特性の存在意義はモーターの回転速度や電流値にリニアに反応するランプなどの制御用。
C特性は入力に大電流を要し、その後は敏感に電流に反応するアクチュエータなどに用います。
 
中学校の技術でボリュームを用いるのはラジオの音量調整(主にA特性)やロボットカーの制御(主にB特性)などがあると思います。よって、特性の選択もできるように、少なくとも特性の存在を知っておくことが必要です。
 
 
 
では、分解に入っていきましょう。
 
 

まずは外観。裏側から。リード線がついているのは、以前実験に用いたからです。気にしないでください。
 表面に4つのツメがあります。これを外します。
 4つとも外すと…
 外れます。が、よくわからない。
 横から覗いてみます。が、よくわからない。これ以上分解するには、カシメ(はめ殺しともいいます)られている部分を削る必要があります。
 削りました。
 外れました。つまみによって白い樹脂部品が回転します。
 重要なのはこの2部品。白い樹脂部品に取り付けられている金属部品は導体です。基盤に塗られている黒い抵抗体の上を回転スライドすることで、抵抗体の距離を増減させ、抵抗値を増減させています。











この構造だったら、ボリュームの足って2本でも機能するのでは?

その通りです。

が、3本であることにも理由があります。
ボリュームとして機能させるには左・中または右・中の足を回路に組み込めば良いです。
ただ、この左・中(右・中)が摩耗などの理由で接触不良となった場合∞Ω(絶縁)状態になってしまいます。回路によっては、これが回路破壊の原因になる場合もあります。これを防ぐために左・中の足を組み込んだ場合に中・右をショートさせるという方法をとります。
この辺りを詳しく知りたい人は、回路設計の本を読んでください。


長くなったので、このあたりで。
次回は、ボリューム分解時にわかった構造の工夫についてです。

2013年11月24日日曜日

エネルギー変換:電子部品の特徴3 抵抗器その2

 
 手持ちの抵抗器、美しものがなくてすみません…
 
抵抗器には種類があります。
電子工作をするときにもっともよく出てくるのが
 
・炭素皮膜抵抗器:精度は低いが安価
・金属皮膜抵抗器:多少高価だが高精度、低ノイズ、温度変化に強い
・酸化金属皮膜抵抗器:この形状の抵抗器としては大きな電力(温度)に耐えられる

の3種類。
一番初めの写真に示したものです。特徴もあわせて記しています。
電子工作では炭素皮膜抵抗器が最も一般的です。
金属皮膜抵抗器は、左右チャンネルの音量差にこだわるオーディオなど、精度を求める用途に。
酸化金属皮膜抵抗器は、小さな電源回路に用います。

これだけを読むといくつかの疑問がわくと思うので、疑問Q&A

Q:炭素皮膜抵抗器で回路を作ったら、誤差でちゃんと動かないのではないのか?
A:ほとんどの場合問題ありません。
最大でも5~10%の誤差です。懐中電灯の明るさの10%、ラジオの音量の10%、扇風機の回転速度が10%変動しても大きな問題はありませんよね。もし必要であれば金属皮膜抵抗器(誤差1%以下の精度)があります。
もっとも、10%の誤差を謳うもので実際に10%の誤差があることはほとんどありません。

Q:3種類の抵抗器の見分け方は?
A:簡単ではありません。
一部では外観の色で見分けられるという説がありますが、確かではありません。
一部ではカラーコード(後記)の本数で見分けるという説もありますが、これも確かではありません。
唯一、抵抗値を測定しながら加熱した際の抵抗値変動が少ないものが金属皮膜抵抗器とわかります(温度変化による抵抗値変化が少ないという特性があるため)。
複数種類の抵抗器があるときは混ぜないようにしましょう。

Q:定格電力を超える電力を印加するとどうなるの?
A:発火します。
特に炭素皮膜抵抗器は炭素が材料ですので燃焼します。
電力用の酸化金属皮膜抵抗器も、定格内での使用でもそれなりに発熱します。手で保持できないような温度になります。基盤に配置する際に浮かせるように指示がある場合は厳守。基盤を痛めます。


ここからは、抵抗値の読み方を記します。
抵抗値はカラーコードと呼ばれる線状のマーキングによって読み取ることができます。
模式図で表すとしたのようになります。


 
 すきまが右側になるように見ます。1,2が数値、3が乗数、4が誤差(許容差)を表します。
赤 黒 黄 金とならんでいる場合、下の表から読みとると、

赤=2
黒=0
黄=10^4
金=±5%

よって、20×10^4の±5%

200000 ±5%Ω    =     200k ±5%Ω

というように読み取ります。

   1,2(数値)   3(乗数)    4(誤差)
黒   0       1     -             
茶   1       10       ±1%                
赤   2       10^2   ±2%                 
橙   3       10^3   ±0.05%               
黄   4       10^4   -                
緑   5       10^5   ±0.5%            
青   6       10^6   ±0.25%             
紫   7       10^7   ±0.1%               
灰   8       10^8   -              
白   9       10^9   -            
銀   -        10^-2  ±10%                
金   -        10^-1  ±5%               

おまけですが抵抗値の設定について。
抵抗値は1~∞まで、1Ω刻みでは設定されていません。
1~10までを等比級数で分割した「E系列」によって設定されています。
だから47kΩとか27Ωだとかの中途半端な抵抗値が多く流通しています。


そして、教育で色を扱う時の注意点です。
日本人男性の約20人に1人は一部の色(赤・緑)が見分けにくい・見分けられない色覚異常を持ってます。カラーコードを正確に読み取ることのできない生徒もいます。よって、色の指導には配慮が必要であり、カラーコードを見分けられない生徒がいても過剰な反応は慎むべきでしょう。

長くなったのでこのあたりで。
次回は抵抗器の中でも可変抵抗器(ボリューム)について書こうと思います。

2013年11月19日火曜日

エネルギー変換:電子部品の特徴2 抵抗器その1

電子工作には必ず出てくる抵抗器。
中学校では理科での学習もあり、生徒も理解していることの多い部品です。

ただ、本当に抵抗器を理解しようと思うと高校物理も必要になってきます。

まず、電気抵抗とは何ぞや、というお話。
電気抵抗を式で表すと以下のようになります。

R=ρl/A

R:電気抵抗
ρ(ギリシャ文字 読み:ろー):電気伝導率
l(アルファベット 読み:える):物体の長さ
A:物体の断面積

式から読み取ると、電気伝導率(金・銀・銅・鉄など、物体固有の値)がいくら低くても、長さの長い物体や、断面積の小さい物体では抵抗値が高くなることがわかります。
これは、電気伝導率の高い銅製の導線でも、長くなれば抵抗として働くということです。
長い距離電気を伝える際や、細い導線(リード線)を用いる時は電圧降下に配慮する必要があることも意味します。
逆に、抵抗値が少しくらい高くても、断面積が大きかったり、長さを短くすれば導線として用いることもできます。
これを利用した製品に高圧送電線があります。支柱間の距離の長い高圧送電線では、単純な電気伝導度で銅に劣るアルミニウムが材料として用いられています。これは単位質量あたりの電気伝導度が高いためです。

次回は抵抗器の種類の予定です。

2013年11月10日日曜日

エネルギー変換:電子部品の特徴1

Bloggerを使ったブログには、簡単なアクセス解析機能がついています。
そこで、最近ヒットしてる検索ワードが電子部品に関するワードです。
あまり勉強できていませんが、簡単にまとめてみます。

電子工作をするときに良く出てくる部品としては

抵抗器:電流を制限する機能
トランジスタ:信号の増幅機能
ダイオード:電流を一方向にだけ流す機能
コンデンサ:電流を貯める機能(ノイズフィルタや同調回路として利用されることも多い)
 IC:信号を制御する機能
コイル:交流電流の流れを制御する機能

等があります。

抵抗器一つにしても

炭素皮膜抵抗器
金属皮膜抵抗器
酸化金属皮膜抵抗器
セメント抵抗器
可変抵抗器(ボリューム)

等があり、それぞれ性質や用途も異なります。抵抗器一つの説明で一冊本が出来ます。
「そこまでは必要ない」という人が多いと思うので、技術科の教員に必須の部分や、私自身が疑問に思った部分について書いてみたいと思います。

2013年11月6日水曜日

生物育成:ナスの栽培6(おわり) 収穫とその後(7月5日~)


7月5日になすびを収穫した時の様子。
長さ25cmほどの立派ななすびが収穫できました。

切断した様子。なかに"ス"もほとんどなく、味もスーパーで売っているものと変わりませんでした("ス"って何?って人向けに。"ス"の語源は"鋳物巣"だと思われます。詳しくはここ)。この後7月中旬から下旬にかけて2,3本のなすびが収穫できました。合計4,5本。






困ったことに、ここで生育が一時中断されました。花が咲かず、結実しない期間が続きました。8月中旬から下旬にかけて、2、3本の収穫はありましたが、苗に元気がない状態です。追肥をしても、灌水をしても一向に良くなりませんでした。

が、10月の上旬から下旬にかけて急に開花・結実が続き10本以上の収穫がありました。
肥料が切れて小ぶりでしたが、それ以外に問題は無し。写真を撮る前にすべて食べてしまったのが残念…

このことより、今夏の猛暑が生育不良の原因として考えられます。
最高気温37~38℃という温度では、生育に障害があったのでしょう。
なすの生育温度は25℃前後が適切ということが考えられます。

以上、ナスの栽培レポートでした。


う~ん。
授業で扱うとなると、

月   作業                        

5月  定植・摘芽    
6月  摘芽・誘引      
7月  摘芽・収穫    
8月  夏休み(水やり)
9月  待つ        
10月   収穫    
11月 かたづけ  

7カ月は少し長い気がする。
8月9月は実もつかず、水が不足するとしおれるので見栄えも悪い。
環境の見栄えを気にする人がいる場合は、根回しをしておいたほうが安心ですね。